農場で働きながら英語を学ぶことができる海外での「ファームステイ」。
「ただ英語を学びに行くのは物足りない」「海外ならではの大自然を感じたい」「動物と触れ合いたい」と思っている人にぴったりの留学スタイルです。
今回はファームステイに興味がある人に向けて、ファームステイの基本的な仕組みから、その魅力、具体的な準備方法などをご紹介します。
||目次||
1. ファームステイとは
3. ファームステイ先の選び方
ファームステイとは
ファームステイとは牧場や農園に滞在し、動物の世話や農作物の収穫などを手伝いながら、ゆっくり英語を学ぶことができる体験型の留学スタイルです。
●ファームステイの種類
ファームステイは、大きく分けると3つのタイプがあります。
・観光型(ホリデー型)ファームステイ
観光型(ホリデー型)は動物の餌やりや果実の収穫などがアクティビティー感覚で用意されているタイプで、滞在費を払って農業体験をさせてもらいます。英語を学びながら手軽にファームステイを体験することができます。
・労働型ファームステイ
滞在先から通い、農場で働いて給料をもらうスタイルです。観光の色合いが少なく、本気で仕事をしたい人や、海外の農業を知りたい人向けです。
・エクスチェンジ型ファームステイ
農場で働く代わりに宿と食事を提供してもらう、という交換型のファームステイです。特に「WWOOF」と呼ばれるプログラムが有名で、WWOOFを通じて世界各国のエクスチェンジ型ファームステイに申し込むことができます。
● WWOOFとは?
WWOOFとは「World Wide Opportunities on Organic Farms」(世界に広がる有機農場での機会)の略です。受け入れ先の農場と働き手との架け橋となるこのプログラムはイギリスで始まりオーストラリアやニュージーランドで人気を得て、今では日本を含めて60カ国以上に事務所が置かれています。
●有給と無給の仕事内容は違う?
有給のファームステイは労働者として農場に雇われるため、仕事内容も無給に比べるとハードです。給料は歩合給もあれば、固定給もあり、募集している農場ごとに条件が異なります。無給の場合、仕事内容はお手伝いなどの簡単な仕事が主体です。
●ファームステイのメリット
自然に囲まれたファームステイでは、周囲に娯楽施設などが少なく、英語の勉強に集中しやすい環境が整っています。農場ではもちろん英語でやりとりするので、田舎暮らしの体験をしながら、密に英語に触れることができるでしょう。
また、日本よりも規模の大きい農場が多く、やり方や考え方などの違いも肌で感じることができます。ファームステイを通じて「視野が広がった」と感じる人も少なくありません。
ファームステイ先におすすめの国
ファームステイが早くから広まっていた国では受け入れ数が多く、これまでの経験に基づいて体制がしっかり整っています。
●ニュージーランド
オーストラリアに近い島国、ニュージーランドは農業王国として大変有名です。特に酪農が盛んで、「人よりも羊の数の方が多い」と揶揄されることもあるほど。最大の都市オークランド近郊のファームステイ先もあります。観光(ホリデー)型とエクスチェンジ型のファームステイが主流で、動物の世話や果物の収穫などを体験できます。
●オーストラリア
オセアニアに位置する大陸で国土の面積は世界で6番目となっており、圧倒されるほど大規模な農場が無数にあります。主な滞在先はゴールドコーストやパース近郊などです。オーストラリアのファームステイには観光型・労働型・エクスチェンジ型と3つのスタイルがあり、選択肢の多さが魅力となっています。
●カナダ
世界で2番目に大きい国土を持つカナダは、都市から少し外れると雄大な大自然が広がっています。フレンドリーな国民柄もあって、昔から留学先として人気の高い国です。有名な観光地も多く、ファームステイをしながら観光スポットを巡りたい人にもおすすめです。ファームステイ先は主にバンクーバー郊外などですが、近くにワイナリーの多いケロウナも人気が高く、他にもカナダ各地に受け入れ先が点在しています。
●イギリス
ロンドンなど大都市のイメージが強いですが、都市を少し離れると農場地帯がどこまでも広がっています。WWOOFの発祥となった国ですが、ワーキングホリデービザの取得は倍率が高いことから、イギリス在住者以外では観光型のファームステイを利用するケースが多くなっています。滞在先は美しい村として人気のコッツウォルズをはじめ、スタッフォードシャー、シュロップシャーなどがあります。
●フランス
ワインの生産国として知られるフランスは穀物の生産や畜産なども盛んで、国土の約半分が農業用地となっています。他国の農家からの農業研修の受け入れも積極的に行っている国で、有機農法への取り組みも進んでいます。ファームステイはエクスチェンジ型が多く見られ、ワイナリーでの収穫体験などが人気です。
ファームステイ先の選び方
自分の目的や希望を明確にしてから、予算の都合がつく範囲で理想に近いファームステイ先を見つけましょう。
●仕事内容から選ぶ
農場での仕事は、簡単なものばかりではないこともあります。中には重労働や汚れる仕事もあります。自分の向き、不向きを考えて選びましょう。
・動物を扱う仕事
牛や馬、羊などがいる牧場では、動物との触れ合いで心が癒されます。牛舎や小屋などの掃除、動物たちの餌の運搬や世話、牧草刈りなどハードで力の必要な作業が多く、体力に自信のある人向けです。早朝から仕事が始まるため、健康的な毎日を送ることができます。
・農作物を扱う仕事
フルーツや野菜の収穫をはじめとした、農作業を手伝うのが主な仕事内容です。ジュースやジャム作り、工場見学やワイナリー見学ができる所もあります。
農作物の収穫は季節が限られているため、短期のファームステイに向いています。動物を扱うよりも力の必要な作業が少なく、女性に人気の傾向があります。
●目的から選ぶ
・農業に触れながらリフレッシュしたい!
「都会での生活から離れたい」「新鮮な空気を味わいたい」といったリフレッシュを目的とした人には観光型のファームステイがおすすめです。仕事というよりも、ホストファミリーに手伝ってもらい、農場での様々な活動に参加させてもらう形になります。収穫した果実でジャムやパイを作ったり、地域のイベントに参加したりなど、普段の生活とは異なる新鮮な体験が待っています。
・本格的な仕事や勉強がしたい!
給料をもらう労働型のファームステイは求められるものが多く仕事もハードになりますが、興味がある人にとっては、働きながら英語と農業のノウハウを学ぶことができる、絶好のチャンスです。
また、英語の勉強をしながら現地で農業などの就労体験ができるプランを用意している語学学校もあります。語学力をつけながら就労体験ができるので、いきなり農場で働くのが不安な人にはおすすめです。
・同じ志向を持つ人と農業を通じて交流したい!
有機栽培や有機農法などに興味があるナチュラル志向の人には、エクスチェンジ型ファームステイを扱うWWOOFの利用がおすすめです。自然・環境・オーガニックなどをキーワードに有機農法を推進している農場でファームステイをすることで、新しい価値観に触れることができます。同じ目的を持った人たちが集まり、交流を深めることもできます。
●費用から選ぶ
通常の語学留学よりも費用が安くすむ傾向にあるファームステイですが、かかる費用を比較するのも滞在先を選ぶ方法の一つです。費用は滞在する国や期間によって異なるので、調べてみましょう。エクスチェンジ型のファームステイを選べば、より費用を抑えることができます。
ファームステイに必要な準備
魅力がたっぷりのファームステイでは準備にどのようなものが必要になるか、チェックしてみましょう。
●ファームステイまでの流れ
まずは自分にあったステイ先を見つけます。見積もりを出してもらい、気になる点は質問をして解決し、申し込みを行います。ビザが必要であればビザの申請を行い、航空券と保険の手配をします。準備が整ったら、荷造りをして出発するだけです。
●ビザについて注意したいこと
観光ビザ、ワーキングホリデービザ、学生ビザなど、ファームステイに必要なビザとその発給要件は国によって異なります。変更されることも時々あるため、渡航先の目星をつけた後は大使館や総領事館などで最新情報を確認しましょう。もし必要なビザを持っていない場合、不法就労になってしまうおそれがあります。
観光型ファームステイは観光ビザ、国や滞在期間によってはビザなしで体験することができます。有給の労働型のファームステイでは、多くの国でワーキングホリデービザなどのビザが必須となっています。注意したいのはエクスチェンジ型で、無給でもビザの必要な国があります。ファームステイの代表的な2カ国を比較してみましょう。
・ニュージーランドの場合
観光型の場合、3カ月以内であればビザが必要ないため、気軽にファームステイを楽しむことができます。3カ月以上はワーキングホリデービザが必要です。3カ月以上農園で働いた人は、証明を出せばさらに3カ月の延長が申請できます。
・オーストラリアの場合
3カ月以内の観光型ファームステイであれば、観光ビザが必要です。労働型はワーキングホリデービザが必要で、一定の条件を満たすと「セカンドワーキングホリデービザ」により、もう1年働くことができます(無給の場合は申請不可)。エクスチェンジ型(WWOOF)の場合は観光ビザ、ワーキングホリデービザ、学生ビザなどが必要です。
●参加前の確認事項
・喫煙の有無
喫煙に対して厳しい国や、喫煙者を受け入れない農場があります。後々トラブルにならないためにも、たばこを吸う人は最初に喫煙者であることを申告して、受け入れ先を決めましょう。
・病歴の申告
長期間、海外で働いていると病気にかかることもあります。また、体験の内容によっては病歴により受け入れが不可能な場合もあります。過去の病歴を英語で書いたものを提出しておくと安心です。
・アレルギー対策
犬や猫などを室内で飼っているホストファミリーも少なくありません。特定のアレルギーがある人は、安全のためにもあらかじめ説明しておきましょう。
素敵な体験を得るためには下調べが大切
爽やかな大自然のもとで農業に携わりながら、英語でコミュニケーションをとる生活は、「一生忘れられない思い出」となるに違いありません。
滞在先で素晴らしい体験を得るためには、まずきちんとした下調べをすることが大切です。ビザの申請など少々難しい手続きもありますが、それらを乗り越えて憧れのファームステイを存分に楽しんでください。