イギリス独自の文化と言えば、何が思い浮かびますか?語学留学では、現地の文化が分からず失敗したり恥をかいたりして、モチベーションが下がってしまうことがあります。語学留学する上では、異文化を理解するのも大切です。今回は、これからイギリス留学を考えている人、留学が決まっている人に向けて、基本的な情報から国民性、行事、マナーまで、イギリスの文化についてご紹介します。
||目次||
1. イギリスはどんな国?
3. イギリスの行事・祝日
イギリスはどんな国?
まずは、首都や面積、人口、文化などイギリスについての基本な情報をご紹介します。
ヨーロッパに浮かぶ島国
イギリスは西ヨーロッパの北大西洋と北海の間に浮かぶ、グレートブリテン島とアイルランド島の一部を領土としています。島国でありながらも、ヨーロッパ大陸の国々に海を越えて歴史的に大きな影響を与えてきました。
4つの国で成り立つ「イギリス(UK)」
私たちが「イギリス」と呼ぶ国は、正式には「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland、略してUK)と言います。連合王国とは、別々の君主を立てていた国が、君主を同じくするなどして、形成した国家のことを指します。イギリスの場合はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国から成り立っています。「イギリス」と呼ぶ際、4つの国の中でもイングランドのことを思い浮かべている人が多いかもしれません。しかし、各国にそれぞれアイデンティティーがあるため、イギリスの人々は大雑把に「イギリス」とまとめられるのを嫌います。サッカーのワールドカップでも、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドと別々のチームがあるのは、こうしたアイデンティティーや歴史的な事情によるためです。
首都はロンドン
ロンドンはイギリスの首都であり、イングランドの首都でもあります。歴史的には、7つの海を制したという大英帝国の首都でもあり、1694年にはイングランド銀行が設立され、金融の中心地にもなりました。世界初の万国博覧会が開かれたのもロンドンです。
面積・人口・言語・通貨・宗教
イギリスは面積24万5000平方キロメートル、人口は推定約6300万人です。言語は、英語だけが公用語ではありません。ウェールズ語、スコットランド語、ゲール語も公用語として使用されています。通貨はスターリング・ポンドを使用しています。さらに、ポンドの下位通貨単位としてペンスがあります。
イギリスではキリスト教の中でもイングランド国教会を信仰している人が伝統的に多く見られますが、宗教に関しては寛容な態度をとっています。そのため、国内には同じキリスト教でも異なる教派の人やイスラーム教徒(ムスリム)の人、無信仰の人もいます。
イギリス王室
現在のイギリスの元首は、女王のエリザベス2世です。立憲君主制であるため、女王は国を統治していません。イギリス王室は女王とその家族で構成されています。エリザベス女王自身が「国民に親しまれる王室」を謳っていることもあり、イギリス王室は国民から常に注目される存在です。
右ハンドル・左側通行
国際運転免許証を取った人の中には、日本と真逆のハンドルや交通ルールに苦労した人もいるでしょう。しかし、イギリスではそのような心配はいりません。日本と同様に右ハンドル・左側通行が原則とされています。
人気のスポーツ
イギリスで人気なスポーツと言えば、サッカーとテニスは外せません。サッカーの母国と言われるイングランドには、「マンチェスター・ユナイテッドFC」や「チェルシーFC」など名だたるチームが存在します。テニスは、世界的に有名なウィンブルドン大会が開催されます。
また、クリケットや競馬も昔から根強い人気を集めています。クリケットはイギリス発祥の伝統スポーツであり、試合中にティータイムがあることなどから「紳士のスポーツ」とも言われています。競馬も、乗馬が上流階級の嗜みとして盛んに行われていたイギリスの一大スポーツです。「ダービーステークス」や「キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス」など、有名なダービーがあります。
イギリス生まれの有名なもの
イギリス生まれの作品や文化には、他にも馴染み深いものがあります。『ハリー・ポッターシリーズ』は、日本だけでなく世界中で社会現象を巻き起こした小説として、イギリス文化を代表するのにふさわしい作品と言えるでしょう。有名ロックバンドのザ・ビートルズもイギリス出身のアーティストです。
イギリスを代表する文化で忘れてはならないのが、紅茶です。イギリスの人たちの紅茶好きは世界でも群を抜いており、1日に5回~6回はティータイムがあると言われるほどです。
イギリス人の国民性・生活習慣
イギリス人と交流する上では、国民性や生活習慣を理解しておくことも大切です。アメリカや日本と比較しながら、特徴をご紹介します。
マナーを重んじる
イギリス人には「プライバシーを大切にし、相手に迷惑をかけない」というマナーがあります。アメリカには初対面でもフランクに話しかけていい文化がありますが、イギリス人にとって見知らぬ人に声をかけることは少し恥ずかしい行為です。イギリス人は話すきっかけや理由を探してから、徐々に相手との距離を縮めていく傾向にあります。
皮肉めいたユーモア
イギリス人には、自分たちのユーモアセンスに誇りを持つ人が多く見られます。アメリカ人とイギリス人のユーモアには大きな違いがあります。アメリカ人はストレートに表現する傾向があるのに対し、イギリス人は皮肉や社会風刺などを使った婉曲的なユーモアやブラックユーモアを好む傾向にあります。
プライドが高い
イギリスとアメリカは同じ英語圏ですが、イギリス人はアメリカ人と同じように見られることを嫌う傾向にあります。イギリス人には自分たちの国が英語の発祥国である、というプライドがあります。
謙遜する
アメリカ人は自身の才能や功績を隠さず、周囲の人にアピールする傾向があります。嘘でなければ、自分の才能を他人にアピールしても良いとする文化があるからです。一方でイギリス人は、自分の才能や功績をあまり人前でアピールしません。多少は謙遜したり、ユーモアを混ぜて話したりしないと、相手に嫌われてしまうことがあります。
文化や芸術を好む
文化や芸術を好むイギリスには、博物館や美術館が数多くあります。施設の多くが寄付やチャリティーにより運営されていて、入場料金が無料の場合は寄付金を募っていることもあります。来場者の寄付により成り立っている点からも、イギリス人がいかに文化や芸術を好んでいるかが分かります。
食へのこだわりがあまりない
イギリス人ですら、「イギリスの料理はまずい」とブラックジョークとして言うことがあります。これは、イギリス人の食へのこだわりがあまりないことに原因があります。その他にも食材があまり豊かでないことや、味付けされないで料理が出てくること、調理法として加熱し過ぎることなどが、イギリス料理がまずいと言われる原因として考えられています。
パブで飲むのが習慣
イギリスではディナー向けのレストランの他にパブという居酒屋が発達しています。庭付きのパブや料理にこだわっているパブ、スポーツ観戦ができるパブなど、種類はさまざまです。「仕事帰りに一杯」というビジネスマンや地元の人々でにぎわっており、社交場としても重要な役割を果たしています。
お茶を好む
イギリス人の紅茶文化には目を見張るものがあります。10時、15時にティータイムを設定している学校や会社もあるほどです。意外にも消費される紅茶のほとんどはティーバッグで、朝起きてすぐのタイミングやベッドの中、家事を終えた後、夕食後などあらゆる場面で紅茶を楽しんでいます。
生活習慣の面で違いはあっても、謙虚でマナー好きなど、イギリス人には日本人と似ている部分もあります。
イギリスの行事・祝日
イギリスには日本にはない行事や祝日が多数あります。どのような祭りがあり、何を祝っているのか、知っておくことも大切です。
パンケーキデーとイースター(復活祭)
キリスト教圏の国で3月下旬から4月にかけて行われるイースター(復活祭)は、イエス・キリストが復活したことを祝う大切なイベントです。イースターの46日前から前日までの間に四旬節と呼ばれる期間があり、イギリスでは四旬節の前日にパンケーキデーを設けています。この日はパンケーキを食べたり、「パンケーキレース」が開催されたりします。パンケーキレースではフライパンに乗せられたパンケーキをひっくり返しながら街中を駆け巡り、老若男女問わず幅広い世代に人気です。
メーデー(五月祭)
春の陽気が本格化する5月になると、イギリスでは春を祝うメーデー(五月祭)が催されます。5月の第1月曜日が休日となり、公園や広場にメイポールという柱を設置してその周りを踊り歩いたり、モリス・ダンスを行ったりする風習がありました。近年はあまり見かけなくなりましたが、今もこうした伝統行事を行っている地域があります。
ウィンブルドン選手権
テニス四大国際大会の一つ、ウィンブルドン選手権(全英オープン)は、毎年6月の最終月曜日から7月にかけて2週間の日程で開催されます。ウィンブルドン選手権には独特のルールがあり、その一つがウエアに関するものです。男女とも選手には白のウエアを着用することが義務付けられており、違反には罰則もあります。他にも観戦する際のマナーがあるなど、紳士淑女の国らしさを思わせます。
BBCプロムス
ロンドンでは夏になると、BBCプロムスと呼ばれる世界最大のクラシック音楽祭が8週間にわたって開催されます。プロムスとはプロムナード・コンサートを意味しており、立ち見席も用意されていて、気軽にクラシックを楽しむことができます。人気演奏家のチケットは長蛇の列ができるため、覚悟が必要です。
エディンバラ・ミリタリー・タトゥ
8月に行われるエディンバラ・ミリタリー・タトゥは、スコットランドのエディンバラ城を中心にさまざまなパフォーマンスが繰り広げられる、エディンバラの代表的なお祭りです。伝統衣装を身に着けた軍楽隊と兵士たちが、バグパイプの音とともに行進します。エディンバラ城にプロジェクションマッピングを映し出すパフォーマンスも取り入れられています。
クリスマスとボクシングデー
イギリスでは、クリスマスの翌日である12月26日がボクシングデーとなっており、この日は冬のバーゲンセールが始まる日でもあります。ボクシングデーはもともと、教会が貧しい人たちのために用意したクリスマスプレゼントの箱を開ける日、クリスマスも屋敷で働く使用人を労わるための日だったとも言われています。
日本と異なるイギリスのマナー
日本と同じようにマナーを重んじるイギリスですが、一概に「マナー」と言っても日本と異なる点があります。
厳格なテーブルマナー
日本のマナーに負けず劣らず、イギリスにもテーブルマナーがあります。いくつかある中から3つご紹介しましょう。まず、食事中は常にテーブルの上に手を出しておかなければなりません。2つ目に、食べるときには音を立ててはいけません。日本では麺類をすすって食べる人が多いですが、イギリス人には嫌がられます。3つ目はフォークを右手に持ち替えない、というマナーです。ライスを食べるときも左手のフォークで食べなければなりません。
店員への挨拶
日本では店員から「いらっしゃいませ」と言われても返事はしません。イギリスではレストランやショップなどに入ったとき、店員に簡単な挨拶をするのが礼儀とされています。
チップの習慣
日本人が海外で慣れない習慣の一つがチップです。イギリスのチップはアメリカの場合とも異なっており、事前に知っておいたほうが良いでしょう。ホテルでは荷物を運んでもらったときなどに1ポンドくらい、合法のタクシーでは料金の10%~15%とされています。また、レストランは料金の10%くらいとされていますが、請求書にサービス料(Service charge)が含まれている場合、チップは不要です。ファストフードやパブ、喫茶店ではチップは不要とされています。
目をそらさない
人の顔をまじまじと見つめることは日本では不躾と思われる傾向にありますが、イギリスはその逆です。人と目が合った場合は、目をそらさずに笑顔を見せましょう。
レディーファースト
電車で女性に席を譲る、出入り口では女性を優先するなど、イギリスではレディーファーストが当たり前です。また、握手する際には女性から手を差し出すのが一般的とされています。
扉を開けた人は後から入る人を待つ
イギリスでは、扉を開けた人は、後ろから入ってくる人のためにも開けたまま待っています。日本でも好意的に開けて待ってくれる人はいますが、イギリスではマナーになっているので気を付けましょう。
子どもの頭をなでることは失礼
知らない子どもはもちろん、自分の子どもでも頭をなでるのは失礼になるとされています。褒めるときも子どもの頭はなでないようにしましょう。
似ている国民性と異なる文化を理解しよう
マナーに厳格であるという点やプライバシーを重視するところなど、イギリス人には日本人と似た国民性があります。一方、アメリカ人と同じにされることを嫌うという点や、日常生活にかかわるマナーなどの異なる文化には気を付けなければなりません。日本の文化との違いを知り、「郷に入っては郷に従え」の精神を持って留学に臨めば、語学留学もさらに充実したものになるでしょう。