イギリスの食べ物は不味いってホント?代表的な料理と1日のメニュー
「イギリスの料理は不味い」。イギリス人にとっては不名誉な噂ですが、耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。イギリスに留学しようと思っている人も、現地での食生活に不安を感じている人もいるのでは?当のイギリス人もブラックジョークとして口にすることがあるくらいなので、残念ながら全く根拠のない話ではなさそうです。なぜこのように言われるようになったのでしょうか?歴史的背景などからこの噂の真偽について検証し、イギリスの料理に興味がある方に向けて、食事のスタイルや代表的な料理をご紹介します。
||目次||
1. イギリスの食文化
2. イギリス人の1日の食事
3. イギリスの代表的な料理
イギリスの食文化
イギリスの料理がなぜ不味いと言われるようになったのか知るには、イギリスの食文化に関わる歴史的背景を知ることが鍵となります。
「ジェントルマン」の質素志向
「ジェントルマン」と言うと、今日では礼儀正しく上品な男性のことを指して使われていますが、元々は16世紀以降のイギリスで力を持った、貴族やジェントリーといった支配階級の人々のことでした。ジェントルマンたちは土地を貸して得た収入によって、贅沢な生活をしたり、教育を受けたり、政治活動を行いました。社会的に大きな力を持つ彼らは、あらゆる生活習慣を定義づけしていく中で「質素な食事こそ、ジェントルマンのすべき食事である」としました。これがイギリス料理の発展を遅らせる一つの原因になったのです。
産業革命の弊害
18世紀に始まった産業革命により、イギリスでは農村部から都市部への移民が一気に進み、労働者たちは過酷な条件での労働を強いられました。都市部に移動したことで、労働者たちは野菜や乳製品を自給できなくなり、食料品店で買い求める簡素な食事が主流となりました。こうして労働者たちの間でも伝統料理が作られなくなり、フィッシュアンドチップスなどが普及していきました。
客が味付けできるようにもてなす
イギリスの伝統的な料理は、味付けがされていない場合が多く見られます。塩やコショウなどの調味料が貴重品とされた時代、調味料を好きなだけ使えるように食卓に並べることが最上級のもてなしであるとされました。客が自分で味付けをするためには、調理の際にはあまり味付けをしないことになります。それがそのまま伝統として残り、現在でも調理の際にはほとんど味付けがなされず、客が自分の好みによって、卓上の調味料で味を調えて食べる場合があるのです。シンプルな調理や味付けが好まれるのには、このような理由が一つの説として言われています。
正しく評価されてこなかったイギリス料理
イギリスでは、歴史的に食事に重きが置かれてこなかったために、特有の美食文化と呼べるものが発達しませんでした。また、素材を活かしたシンプルな調理法や味付けは他国の人たちにとって物足りなく感じられたのでしょう。必ずしも「イギリスの食べ物が不味い」というわけではなく、正しく評価されてこなかっただけなのです。おいしいイギリスの料理もたくさんあります。都市部でも洗練された料理を味わえるレストランが増え、その質の高さは他国にも引けを取らない素晴らしいものです。かつてのイギリス料理に対するマイナスイメージは払拭されつつあります。
イギリス人の1日の食事
イギリスの人たちはどのような食事をとっているのか、朝食から夕食まで代表的なメニューをご紹介します。
朝食
イギリスの伝統的な朝食として知られる「イングリッシュ・ブレックファスト」はイングランドでの呼び名で、「フル・ブレックファスト」とも言います。薄めにスライスしたトーストに、目玉焼きなどの卵、ソーセージ、ベーコン、ベイクドビーンズやトマト、ハッシュドポテト、マッシュルームなどが豪華に添えられた朝食のことで、ホテルだけでなくパブでも気軽に食べられます。こうしたクラシックな朝食は、一般的な家庭では休日など時間に余裕があるときに好んで食べられ、平日の忙しい朝にはトーストやシリアル、ポリッジと呼ばれるオートミールなどが食べられています。ポリッジは牛乳を入れてレンジで温めたもので、はちみつやフルーツを入れて食べる人もいます。ヘルシーで栄養価が高く、腹持ちも良いのが特徴です。
昼食
お弁当を持参したり売店で買ったりして、サンドイッチやサラダを食べる人がほとんどです。ジャケットポテトと呼ばれる、ベイクドポテトにチーズやベイクドビーンズをトッピングしたものや、クリスプ(ポテトチップス)を食べる人もいます。また、午後2時から午後5時頃はアフタヌーンティーの時間帯です。カフェやレストランでも専用のメニューが出されます。おやつに人気のリーズナブルな「クリームティー」や、サンドイッチやデザートも含まれた軽食に近い「アフタヌーンティー」、アフタヌーンティーよりも遅い時間に楽しむ「ハイティー」があります。
夕食
ローストしたり煮込んだりした肉や野菜にジャガイモを添えたものや、パスタ、ミートパイなどが主な夕食のメニューですが、その他にカレーや中華風の炒め物なども食べられています。オーブンで温めれば食べられる食品を買って食べる家庭もあります。「サンデーロースト」は、その名の通り日曜日に家族で食卓を囲み、ローストした肉を食べるという伝統的なイギリス料理です。牛や羊、鶏などをローストしたものにローストポテトや野菜、ヨークシャー・プディングと呼ばれるシュークリームの皮のような生地の食べ物を添え、グレイビーソースをかけて食べます。イギリスの人たちは日曜にサンデーローストを食べながら、家族や友達とゆっくり過ごすひとときを楽しみにしています。
イギリスの代表的な料理
イギリスで伝統的に食べられている料理には、日本ではあまり知られていない魅力的なメニューや個性的なメニューがあります。
スコッチエッグ
下味を付けたひき肉でゆで卵を包み、パン粉をまぶして揚げた料理で、イギリスで人気のフィンガーフードです。冷めてもおいしいので、パブやレストランでは軽食やおつまみとして、家庭ではお弁当にも入れられる定番の一品です。
ブラックプディング
プディングと言ってもデザートではなく、豚の血を混ぜて作られたソーセージのことです。肉は使わず、豚の血にスパイスやオートミールなどを加えて腸詰めにし、ゆでて火を通したもので、その名の通り真っ黒な見た目が特徴的です。レバーのような味で、ソテーしたりサラダに混ぜたりして食べます。
フィッシュアンドチップス
タラなどの白身魚のフライとチップスの組み合わせにレモンやタルタルソース、グリンピースのピューレなどが添えられた、イギリスでは最もポピュラーなファストフードです。日本のフライドポテトのことをチップスと言います。魚のフライの衣には小麦粉と卵、水もしくはビールを使い、軽くてサクサクとした食感です。塩とたっぷりのモルトビネガーをかけていただくのがイギリス流の食べ方です。
スターゲイジーパイ
フィッシュパイの一種で、イングランド南西部コーンウォール地方の伝統料理として知られています。ジャガイモやタマネギをソテーしてホワイトソースで和え、イワシやニシンなどとパイで包みます。パイ生地からは魚の頭が突き出しており、魚が星空を見上げているように見えることから、その名が付いたと言われるユニークな料理です。
ハギス
スコットランドの名物で、羊の内臓、タマネギ、オートミール、ハーブ類などを羊の胃袋に詰めて煮たり茹でたりした食べ物です。スコットランドの人たちは、スコッチ・ウイスキーのおつまみとして食べています。
知らない人は損!ホントはおいしいイギリス料理
調理法や味付けから、これまでイギリスの料理は不味いと言われてきました。しかし、それも過去のことで、意外と知られていない魅力的なイギリス料理はたくさんあります。また、伝統料理とは少し異なりますが、イギリスではインド料理や中華料理なども根付いており、本国とは一味違ったおいしさを楽しむことができます。都市部のレストランと郊外のパブ、家庭料理とを食べ比べてみても、それぞれ異なる料理を味わうことができるので、ぜひ現地を訪れる際には新たなおいしさを発見してみてください。
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