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教科書を使わないイギリスの小学校

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27 3月 2019
イギリスの小学校での勉強方法

学校の歴史の授業で、石器時代のことについて学んでいる7歳の息子に 、「Paleolithic(旧石器時代)とMesolithic(中石器時代)、Neolithic(新石器時代)のそれぞれの時代の違いについて、知っている?」と質問されたのですが、正直、答えられませんでした。

イギリスの小学校には、以前に通っていたオーストラリアの小学校同様、教科書がありません。そのため、子供たちが学校でどんな勉強をしているのかについて知るには、 週に1回、「今週は何を学んでいるのか」を説明するためにインターネット上に掲載されるお知らせが唯一の手がかりなのですが、歴史の授業については、「Comparing Stone Age, Bronze Age and Iron Age(石器時代、青銅器時代、鉄器時代の比較)」と記載されているのみ。

そんな中、石器時代についての学びの総結集として、Stone Age Dayというイベントが企画されました。「石器時代の人々の格好をして登校するように」とのことで、 イベントの前には息子と大英博物館に石器時代の展示を観に行ったり、ヒョウ柄の服を用意したりしながら、私も当日の様子が聞けるのを楽しみにしていました 。

当日、どんなことをしたのか、息子に詳しく聞いてみました。石器時代の食べ物、アクセサリー、壁画をテーマに、それぞれアクティビティーが用意されていたとのこと。「家族のために食べ物を採取しよう」というお題が出され、 教室中に散りばめられた石器時代の食べ物(カード)を採取し、各自、その食べ物をお皿に盛り付ける(紙皿に描く )という作業をしたそうです。 また、粘土を使って動物の歯などをあしらったネックレスを作り、石器時代に描かれた壁画をイメージした絵も描いたと教えてくれました。午後には 、家の庭から持ち寄ったり、学校の校庭で集めたりした木の枝や石を使用して、石器時代の住居作りをしたそうです。チームに分かれて、旧石器時代など三つの時代の住居を再現したとのこと。住居作りはとても難しかったそうですが、作りがいがあり、とても楽しかったと喜んでいました。

冒頭に書いた息子からの質問「それぞれ三つの時代の違いとは」に対する答えとしては、住居の違いが挙げられるそうです。旧石器時代は狩猟採集社会だったことが特徴の一つで、遊牧民のような生活を送っていました。中石器時代には道具類が活用され始め、新石器時代になると村落が形成され、農耕も発展していきます。そうした変化に伴い、住居の形態も変わっていったとのこと。

実際に身体を動かして学んだことというのは、より鮮明に記憶に残るのではないかと、子供の学校を通して学んでいます。私も三つの時代の違いについて今後聞かれることがあった場合 には、すぐに答えられるのではないかと思っています。「学びは教科書からだけではない」そして 「楽しく学ぶことが何よりも大事」という基本的なことを、息子の学校の教育から、改めて考えさせられています。

 

著者の紹介

伊藤由起子